ホーム > 関西花の寺めぐり > 長岳寺 サイトマップ

関西花の寺第十九番
釜口山 長岳寺
(かまのくちさん ちょうがくじ)
所在地及びアクセス:

 奈良県天理市柳本町508

 JR桜井線「柳本」駅下車。
 駅前広場から真直ぐ東側に延びている商店街を進む。400m程歩くと左手に黒塚古墳が見える。更に約200m進むと国道169号線に行き当たるのでそれを横切り、数十メートル北側にある三叉路を東の方向に向かう。途中、右手に崇神天皇陵が見える。左方向にトレイルセンターの建物が見えるので、その敷地内、駐車場を通過すると長岳寺の大門に着く。
 「柳本」駅から徒歩約20分。

縁起:
朱印
 長岳寺は天長元年(824年)に淳和天皇の勅願により弘法大師によって開基されたと伝えられている。創建に際し当時は大和神社の神宮寺としての目的があったらしい。鎌倉時代には興福寺大乗院の末寺になっていたようである。

 中世には広大な寺領を所有していたが、応仁の乱や文亀3年(1502年)の兵乱などに遭遇、仏閣は炎上し衰退したという。その後、慶長7年(1602年)に徳川家康の庇護により復興することが出来、往時は本堂、不動堂など20坊以上を数えたようである。時代は下り、この寺も維新の変革で廃絶に及ばんとしたが、民衆に深く根ざしていた大師信仰によって寺は存続することが出来た。

 現在、寺には平安時代の建造物や仏像も残されており、歴史を経た文化財を今も多く所蔵している。

 当寺は別称で釜の口大師と呼ばれることがあるが、これは当寺が釜口山上にあることに由来している。

当寺の花:

1.主たる花:
  平戸ツツジ(右の写真)
  見頃は4月下旬〜5月上旬


2.その他四季の花
  春:カキツバタ(5月)
  秋:紅葉(11月)
平戸ツツジ

境内諸堂配置:
境内諸堂配置図
 左のコピー(長岳寺発行の拝観パンフレットより)は長岳寺の境内諸堂配置を模式的に表した図である。

見所など:
大門
 左の写真(秋に撮影したもの)は長岳寺の「大門」でここから内側が境内になっているようである。

 この門は寛永17年(1640年)に再建されたものといわれている。

 この門の名称は大門であるが、見た目には一般に山門と呼ばれているものと同じような規模のものであり、重厚さも感じられず平凡である。
参道のツツジ(1)
 「大門」をくぐると参道が奥に向かって続いているが、この参道の両側には左の写真に見られるように平戸ツツジが密集して植えられている。
参道のツツジ(2)
 花の寺としての長岳寺の主たる花は平戸ツツジとされているが、ツツジは「大門」から拝観受付までのかなり長い参道と本堂傍の場所に集中している。左の写真もツツジの咲いている参道の一情景である。
参道のツツジ(3)
 左の写真も上記二枚の写真同様ツツジの咲いている参道の一情景である。
延命殿
 参道を奥に進むと拝観受付場所の直ぐ手前に左の写真に見られる建物が建てられているが、これが「延命殿」(左の写真)である。

 かつて数多くあったとされる塔頭の内、唯一残っているのが地蔵院(旧)であるが、旧地蔵院の本堂がこの「延命殿」である。江戸時代初期の創建による小さな堂であるが、その形は桃山風で優美である。

 「延命殿」は重要文化財に指定されている
楼門
 拝観受付の前を通ると奥に「楼門」(左の写真:秋に撮影したもの)が見える。上層に鐘を吊った形跡があるので「鐘楼門」とも呼ばれている。

 この楼門は平安時代の創建になるもので、当寺創建当初の唯一の建物といわれているが、鎌倉時代に造られたものとの説もあるらしい。

 「楼門」は重要文化財に指定されている。

 何れにしても、長岳寺ではこの建物が最もよく知られており、確かに印象に残る建物である。何だかよくわからないが、ボランティアのガイドは『どんな人でもこの楼門を写真に撮ると上手に撮れる』と言う。
本堂(1)
 楼門をくぐると左手に大きな建物が見えるが、これが「本堂」(左の写真:秋に撮影したもの)である。

 この「本堂」は天明3年(1783年)に再建されたものといわれている。
本堂(2)
 左の写真は「本堂」正面である。「本堂」の中に本尊の「阿弥陀三尊」(阿弥陀如来と両脇侍の観世音菩薩、勢至菩薩)が安置されている。また、本尊の傍には多聞天及び増長天の二体の仏像が安置されている。本尊は玉眼入りで、玉眼を使用した仏像としては日本で最古のものという。

 本尊の阿弥陀三尊は仁平元年(1151年)の作といわれ、多聞天、増長天共に何れも重要文化財に指定されている。

 また、当寺には江戸時代初期、狩野山楽作の「大地獄絵図」が所蔵されている。この絵は九幅から構成され縦4m、横11mの大作で三途の川、八大地獄、十王裁判図などが描かれている。通常は秘蔵されているが、毎年秋には開帳される。
本堂(3)
 「本堂」の前には「放生池」があり、左の写真のように池の対岸から「本堂」を望むことが出来る。

 この情景は「極楽浄土」を表現しているといわれている。花の咲く季節には、そのように見えるかも知れない。
 
放生池のカキツバタ
 「本堂」前の「放生池」(左の写真)には沢山のカキツバタが植えられており、5月には写真で見られるように青紫色の花を咲かせる。

 当寺が花の寺といわれているのは、ツツジによるところが大きいが、このカキツバタも花の寺といわれるのに大きな役割をはたしている。
放生池畔の紅葉(1)
 当寺は紅葉の寺としても著名である。特に「放生池」の周辺や「楼門」周辺は季節になるときれいな紅葉を見ることができる。左の写真は「本堂」の前から「放生池」対岸の紅葉}を見たものである。
放生池畔の紅葉(2)
 左の写真も直上の写真と同様、「本堂」の前から「放生池」対岸の紅葉を見たものである。ただ、きれいな紅葉が見られるかどうかは、その年の気候によって大きく影響されるようである。
大師堂
 「本堂」前を奥に進み、石段を上ると左手に「大師堂」(左の写真)が見える。

 「大師堂」は正保2年(1645年)に建立されたといわれており、内には当寺の開基である弘法大師像と藤原時代の不動明王が祀られている。

 「大師堂」は奈良県の文化財に指定されている。
弥勒大石棺仏
 「大師堂」の前の石段を上がると、かなり狭い場所に弥勒大石棺佛(左の写真)が建てられている。

 この弥勒菩薩像は高さが約2mで、鎌倉時代の作になるものと考えられており、古墳の石棺の蓋を利用して彫られたものとされている。

 この石佛は特に文化財としての指定はないようであるが、長岳寺に参拝した際、印象に残る石仏像である。
小石仏
 長岳寺の境内には左の写真の見られるような「小石仏」が所々に置かれている。

 これらの「小石仏」は鎌倉時代から江戸時代にかけて造られたものと考えられている。
鍾堂
 「本堂」から見て「放生池」の対岸、南東側のやや高い位置に「鐘堂」(左の写真)が建てられている。

 写真でもわかるように「鐘堂」はかなり簡素な建物である。



 長岳寺から1kmほど西の方に「五智堂」と呼ばれている建物がある。寺からはかなり離れた場所にあり、忘れられていることが多いが、ここも長岳寺の境内(飛び地境内)である。この建物は中心に柱がありあたかも傘のような形状をしているので「傘堂」とも呼ばれているようである。

 この「五智堂」は鎌倉時代の建物といわれ、重要文化財に指定されている。

2012年3月10日最終更新
関西花の寺めぐりのページへ戻る このページの先頭へ戻る