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西国第一番
那智山 青岸渡寺

(なちさん せいがんとじ)
所在地及びアクセス:

 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山8

 JR紀勢本線「紀伊勝浦」駅下車、駅前から熊野交通バス「那智山」行きに乗車する。バスは途中「那智駅」を経由するのでここからバスに乗車してもよい。終点の「那智山」で下車する(バス乗車時間は約25分間、運賃は往復割引1000円)。青岸渡寺への参道の石段はバス停から徒歩すぐ。

 「那智山」行き熊野交通バスの「紀伊勝浦駅」停留所発車時刻(8時〜18時の間について)は次の通り(平成30年3月17日改正、平成30年10月現在)。なお、「那智駅」発時刻は「紀伊勝浦駅」発車時刻の8分後。
紀伊勝浦駅発 8:25 8:55 9:30 10:25 11:05 12:10 13:10 14:10 15:10 15:45 16:35 17:05
那智駅発  8:33 9:03 9:38 10:33 11:13 12:18 13:18 14:18 15:18 15:53 16:43 17:13
那智山着  8:50  9:20  9:55  10:50  11:30  12:35  13:35  14:35  15:35  16:10 17:00  17:30 
 バスの時刻はしばしば変更されることがあるので、利用される際は上記時刻の変更有無について下記へご確認されることをお勧めいたします。
 問い合わせ先: 熊野交通 勝浦自動車営業所
           電話: 0735-52-0028  営業時間:8:30〜18:30(年中無休)

宗派:天台宗

本尊:如意輪観世音菩薩

開基:裸形(らぎょう)上人

縁起:
朱印
 仁徳天皇の代(4世紀)にインドから熊野灘の浜に漂着した裸形上人が、那智山に籠もり、那智の大滝にうたれること千日、その修行中に滝壺の中に黄金色に輝く丈八寸の観音仏の出現を見たという。
 裸形上人は小堂を建て、授かった黄金の観音仏を祀ったのが当寺の創始とされている。
 その後、推古天皇の代に大和からきた僧、生仏上人が玉椿の大木で一丈(3m)の如意輪観音像を刻み、この中に裸形上人が感得した黄金の観音仏を胎内仏として納め、勅願所として本堂を建立したという。

境内諸堂宇配置:
青岸渡寺境内配置図

見所など:
山門
 バス停のすぐ近くから参道の石段が本堂の前まで続いており、参道即石段であり、段数はかなり多い。

 本堂のすぐ下に「山門」(左の写真)が建っている。昭和8年(1933年)の建設といわれており、見た目にも新しい建物である。山門に安置されている金剛力士像は湛慶の作と伝えられているようであるが、これは信憑性に乏しいのではないかと思われる。

 バスで来る人も、自家用車の人も、参道石段の近くまで乗り物で来るが、できれば、バス停の大門坂でバスを降り、そこから青岸渡寺までは「熊野古道」を歩いてみるのもいいかもしれない。
本堂
 「本堂」(左の写真)は推古天皇の時代に創建されたといわれており、現在までに数回改築されているらしい。

 現存の本堂は、織田信長の軍勢によって焼き討ちされた後、天正18年(1590年)に豊臣秀吉が弟秀長に再建させたものであるといわれており、大正13年(1924年)に修理されているという。

 「本堂」は桃山時代の建築様式を伝えている建物であり、重要文化財に指定されている。
本堂正面近景
 「本堂」(左の写真は正面)に祀られている本尊、如意輪観世音菩薩像は、推古天皇の代に生仏上人が刻んだもので、縁起の項にも記載したように裸形上人が感得した観音仏を胎内仏にしているという。これが真実とすれば、約1400年も前に造られた仏像ということになるが、文化財の指定がない。

 本尊は秘仏であり、通常、本尊は直接拝観できないが、前立ちの如意輪観音座像が安置されている。
鐘楼
 「本堂」の北側に「鐘楼」(左の写真)が建てられている。「鐘楼」内に吊り下げられている梵鐘は鎌倉時代の元亨4年(1324年)鋳造されたものと言われており、河内国河内介弘の銘がある。
宝筐印塔
 「本堂」の北側隅に「宝篋印塔」(左の写真)が建っている。

 宝篋印塔は供養塔、墓碑塔として建てられているが、元々は違った目的で建てられていたものらしい。現在見られる形は鎌倉時代以降に成立したものといわれている。

 この「宝篋印塔」は元享2年(1322年)の造立とされ、重要文化財に指定されている。

 本堂の裏手の小高い場所には馬頭観音、大黒天並びに六福神を安置した「大黒天堂」(如法堂)が建てられている。大黒天は「那智大黒天」として古来より有名である。
三重塔と那智の滝遠望
 「本堂」の正面に向かって右側は広場になっており、那智大滝や三重塔を遠望することができ(左の写真)、滝を背景として記念撮影する格好のスポットになっている。
三重塔
 本堂横を北側に進み、坂を下りると朱塗りも鮮やかな「三重塔」が間近に見え、その奥に「那智大滝」を遠望することができる(左の写真)。

 この「三重塔」は昭和47年(1972年)に再建されたといわれており、見た目にも新しい建物である。その内部には飛滝権現本地千手観音が安置されており、内部の壁面には彩色の金剛諸界仏、観音、不動明王などの壁画が描かれている。ただ、建物が新しいだけに、壁画も新しい。

 塔の二、三階は展望所になっている。寺の人は「特に二階は那智大滝の展望場所として最適」という。

 「三重塔」から北西の方に向かって坂を上がったところに「瀧宝殿」が建っており、ここには重要文化財に指定されている「銅造大日如来立像」や「銅造観音菩薩立像」など、その他寺宝が保管されているようであるが、常時公開されてはいないように思われる。
那智大滝
 「那智大滝」(左の写真)はその落差133mといわれており、さすがに雄大である。写真でもわかるように、滝口が三筋になっているが、これが那智の滝の特徴とされている。

 写真でもわかるように滝口の上に注連縄
(しめなわ)が張られているが、この滝は滝壺の近くにある「飛滝神社」のご神体とされている。飛滝神社は、かつて那智山の郷社であったが、昭和12年(1937年)に「熊野那智大社」(後述)の摂社になっている。

 この「那智大滝」は飛滝神社の前から目前に見上げることができる。
鎌倉式石段
 三重塔の下の車道を少し歩くと、「鎌倉式石段」(左の写真)に出る。石段を下ると飛滝神社の境内入口、滝前のバス停に着く。

 石段は約100m続いており、一番上の所に、かつて、滝(権現)の遥拝所があったとされる場所があり、ここで滝を正面(北)にみて伏拝んだといわれている。また、この石段は火祭り祭事にも使われているようである。

 鎌倉式石段を通って青岸渡寺に行くこともできるが、この道を利用する人は極めて少ないようである。古道の味わいがあるこの石段は是非通ってみたい。

 この「鎌倉式石段」は史跡に指定されており、那智勝浦町指定文化財である。

世界遺産に登録:


 2004年7月に「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録された。上述の「青岸渡寺」はこの世界遺産の中に含まれている。青岸渡寺のすぐ傍に位置している熊野那智大社や青岸渡寺の信仰の原点である「那智大滝」は自然信仰の重要な構成要素になっている。

御詠歌:補陀洛(ふだらく)や岸うつ波は三熊野(みくまの)の那智のお山にひびく滝津瀬

2017年9月1日最終更新
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