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「ミソ」も「クソ」も一緒(その1)

 綺麗なものも汚いものも同じように扱うことを、「ミソもクソも一緒」という言い回しをするが、ここではズバリ言葉通りのお話をしてみたい。

 大腸癌発見の診断法の一つに「便潜血試験」がある。癌の診断法としては確度がそう高いものとは思えないが、被験者に肉体的苦痛を強いることはないことから、広く採用されている。

 このための診断薬が、多くの診断薬製造会社や製薬会社から発売され、より使いやすく、測定精度が高く、製造原価の安い試薬の開発、改良と過激な販売競争をくり広げているのである。

 これは、
某社が行った「便潜血試験試薬」開発の実話である。

 測定精度を高めるためには、試験のために採取するウンコの量を出来るだけ正確にする必要がある。といっても、ウンコを秤で計るわけにはいかない。まず、臭いし、誰もが計る作業を拒絶するからである。

 そこで考えられたのが、下の図にあるような幅数ミリ、長さ数センチのプラスチックの棒に溝を付けた器具を用いることである。

 これを被験者に渡し、溝を付けた部分をウンコにつけ、溝をウンコで満たし、余分に付着したウンコを拭き取ると、結果として一定量のウンコが採取できるわけである。被験者はこれを溶解液の入った瓶に入れ、密栓して検査技師に渡す。なかなかうまくできている。

 採取のしかた、拭き取り方で溝に入るウンコの量及び誤差(バラツキ)がどの程度か、を確認しておく必要がある。

 この確認実験に開発担当者(グループ)は、
ウンコを使用せずミソを使ったのである。彼(女)らの頭の中は正に「ミソもクソも一緒」だったのである。

 彼らの説明によれば、「見た目が似ているから・・・」という。
彼らは外観が似ていれば本質は同じである、というのは非科学的な判断であることに気がついていなかった。

 ウンコの代わりにミソを使った、という具体的事実などは大した問題ではなく、ウンコから直ちにミソを発想した頭脳の単純さが問題なのである。


 因みに、この便潜血試験試薬の売れ行きは極めて低調であるという。この事実を、上に述べた開発の経緯と関連付けてはならないのは当然である。
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Yukiyoshi Morimoto